くれない工業会(東工大女性卒業生・東工大女子学生の会)

平成28年度第1回スタディツアー 鉄道総合技術研究所 訪問
2016.5.18
今回訪問したのは鉄道総研にご勤務の武内陽子さんです!
信号・情報技術研究部 運転システムにて主任研究員を務める武内さんに加え,
異なるお仕事に従事される3名の方々にお話を伺いました。

 
 日時:2016年5月18日(水)14時半~17時
 訪問先:鉄道総合技術研究所(国立駅北口徒歩7分)
 受入担当:  信号・情報技術研究部 武内 陽子 様
                    車両構造技術研究部    小金井 玲子 様
                    構造物技術研究部       石突 光隆 様
                  総務部                       藤浪 浩平 様
 参加人数:東工大女子学生9名





Q.私鉄とのかかわりは?鉄道研究所はJRからのものだと思いますが、私鉄との共同研究の話はありますか?
 
武内(以下 T):私鉄からの研究開発の依頼もあるし,共同研究もある。また,私鉄だけではなく,大学やメーカーとの共同研究もある。
 

Q.大学時どんな研究?どんな学生生活?

T:サークル(ボート部マネージャー)とバイト、特に変わった活動はしてなかったように思う。いざ就職のときに情報系なので電気メーカーを受けようとしていたら鉄道総研に研究室の先輩がいて話をする機会があった。研究職につく気はあまりなかったが、鉄道総研の仕事内容は開発に近いので面白いことができそうだと思った。

小金井(以下 B):バイトと授業を両立していた。M2後は就職するつもりだったが、M2の途中で研究を続ける決断をし、博士課程に進むことにした。研究職を志望して鉄道総研に就職した。これまで学部では飛行機、修士ではロケットを対象とした研究をおこなっていたが、より身近な鉄道を新たな研究対象として選んだ
 
石突(以下I):大学では,高層建築物からの避難について,車いすの方の避難方法などの研究をしていた。鉄道総研でも,人の流動という観点では大学と似たことを研究しているが、大学での専攻と違う分野も扱う場面が出てくるので,違うことにチャレンジできる姿勢が大事。大学では音楽活動もしていたので,今も会社の班活動(社内のサークル活動)でいろいろな分野の人と知り合いになる機会がある。いざ,仕事の場面でも、事前に顔が分かっているとやりやすいことも多いので、趣味は大事なコミュニケーションツールになっている。


Q.女性だからなにかあったことは?メリットデメリットとは?

T: 印象的だったのは、入社して3年目で子供を産んだときに、先輩にいつ復帰するのかと聞かれたことで,子供を産んで復帰して働くというのが自然に受け入れられる職場であると感じた。育児休暇を特別なこととは思わずに取得できる。これは,出産経験のある先輩たちが頑張ってくれたからであり、恵まれていると思う。他会社への出向制度もあり,組織全体として,産休・育休で人が一時期抜けるという事態に対応できる素地はできていると考えている。子育てには終わりがあるので、仕事を続けたいという意志がある方には,子育てを理由として辞めずに,一時期は仕事量を減らしてもよい,という気持ちで,仕事を続けてほしい。入社から13年たって、後輩の面倒をみたり、責任ある仕事をしたりする機会が増えており、今後の業務量をどうコントロールするかがこれからの課題と考えている。家庭と両立しながらやっていきたいと思う。
 
B:デメリットはあまり感じていない。所属する研究部では初の女性職員だった。妊娠や育休など初めての事柄に対し、柔軟に対応していただいた。デメリットを一つ挙げるとすれば、女性用のお手洗いが男性用に比べて少ないことで、屋外作業のときには離れた本館のお手洗いを使用していた。最近になって増設され、より一層快適な生活を送ることができている。
 

Q.仕事のやりがいは?

T:現在,鉄道の列車運行電力のシミュレーションと,無線式列車制御システムのシミュレーションに取り組んでいる。電力シミュレーターは電力技術研究部と車両制御技術研究部の3つにまたがる研究である。電力や車両の詳細な部分を理解することは難しいが,みんなで協調して取り組むことで,今までできなかったことができていくことが面白い
 
B:自分が関わった研究から実用成果が得られた時に、研究者としての喜びを感じ、研究のやりがいを感じる

I:自分は駅の旅客流動に関する分野を担当しているので、駅の平面プランについて相談を受けることがある。自分のアドバイスで駅が良くなった時は,達成感がある

藤浪(以下 H):人間工学研究室では、鉄道を利用するお客さまと鉄道で働くひとの安全や快適について研究している。自分も鉄道の利用客なので便利なものが実現できて、それを実際に使えるようになると嬉しい。最近の実用例では通勤車両の縦手すりがある。円弧型の縦手すりを研究したチームに参加した。こういうものが実用化されて自分の子供と一緒に電車に乗った時にこれに関係していたといえるのはうれしい。この仕事で頑張りたいという思いにつながる。成果に対して鉄道事業者からありがとうと言われるのもうれしい。日常的な小さな問題を解決できたことに対して電話などでありがとうと言われることもうれしいこと。自分のやったことが相手の幸せにつながるのはやりがいになる


Q.研究成果が実用化されるまでの時間は?

H:いろいろだが、ホーム縁端警告ブロックの実用化は早かった。安全にかかわる問題なので、すぐに実用化できるように活動した。

B:すぐに実用化に結び付かないケースもある。過去に研究開発を終えていたものでも、数年たってからニーズがあり、実用化になるケースもある。
 
I:駅の快適性に関する研究は,比較的長いスパンで行っているが,設計法や安全性に関わる研究は,スピーディーな解決が求められる

T:システム(プログラム)を作成して売る他に,研究開発成果を活用するコンサルティング依頼を受けることも多い。研究課題を解決するためのベースとなるシステムをつくっておいて、そこにご依頼があった機能をつけることもある。
 
H:実用化のイメージは、必ずしも、ものができるということではない。鉄道総研が持っている知見でアドバイスをして、鉄道事業者側で実現するのも実用化と考えていただいていいと思う。そのようなことも含めて、鉄道総研の研究開発には実用指向が求められている


 
  
見学の様子


Q.女性学生へメッセージ

T:その時にしかできないことをやってほしい。たとえば、社会人はお金があっても時間がないとか(学生はその逆)、いつでも制約はある。その中で、自分が置かれている環境で楽しめればどこでも就職しても大丈夫。楽しかった思い出は励みにもなる。学生生活を楽しんでください。

B:当時は機械系学科を進学先に希望する女子は少なかったので、大学受験時に機械系への進学でよいのか担任の先生から何度も確認された。あの時、志望が揺らいでいたら、今の自分はないので、機械系に進学するという希望を貫いて良かった。今は、仕事をずっと続けたい女性も増えているし、それ以外にも、色々な段階で、様々な選択肢が女性にもあると思うので、やりたいと思ったことに素直に正直に自分の道を進んでほしいと思う。やはり、性別に関係なく勉強はしておいたほうがいい。就職してから自身の専門分野については勉強することはあるが、他の分野を深く勉強する機会がない。学生の頃は様々な分野を勉強する時間も十分あったので、それが研究に活かせていたかもしれない。

I:私の部署では、今年初めて女性職員が入社したぐらい、女性職員は少ない。男性は同期の同期が多いので話せる相手も見つかるが、女性は同性が少ないので,そういった点では大変だと思う。社内では話しにくいことや、適当な話し相手がいないとき、学生時代の友人は頼りになる。交友関係を大事にして学生生活を頑張ってください。
 
H:友達をたくさん作って。それは先に石突さんが言ったように、同じ会社とか同じ分野ではない人に対しても、困ったときに相談したり、話したりできる人がいたりするというのは重要になってくる。友達をたくさん作って、長く付き合える人をその中から見つけて。特に女性だから何かをというのはないのではないと思う。

H:上だとか下だとかは関係なく付き合うことを今から学んで。その中でいい関係の人がだんだん見つかってくる。これは学生に限らず、会社に入ってからのことでもあると思う。楽しくその時にできることを目いっぱいやる。勉強はしたほうがいい。目的がはっきりないと勉強しないとは思うが、基礎の基礎を大学時にしっかりやっておけば、会社に入ってから勉強するときに必ず役に立つ