くれない工業会(東工大女性卒業生・東工大女子学生の会)

平成27年度第1回スタディツアー  農林水産省訪問
2015.5.27

 
第2回スタディツアーで訪問したのは現在農林水産省にご勤務の矢野路子さんです!
座談会の様子、スタディツアーの様子をご紹介します。
 

Qなぜ農林水産省という職場を選んだのですか?
 もともと食べることが好きで「食」に興味がありました。食べ物はいずれ食べた人自身に変わる大切なもの。その重要な「食」に関わる仕事はとても魅力的だと思いました。
 就職活動を始めたときは、「食」に関わる仕事として民間企業への就活も考えていました。民間企業の仕事もとても面白そうだったのですが、「食」に対して商品を通してしか接点がないところが少しさみしいなと思いました。でも、農林水産省なら、農業全体を所管しているので、生産から加工、流通、消費まで、広く「食」に関わることができる。そんなところが、すごく魅力的に感じて農林水産省を選びました。
 
Q実際に農水省に入ってから、どのような印象を受けましたか?

 入ってみると周りは地方出身者や農学系出身の人が多く、「農業」というものを感覚で解っている人が多いなという印象を受けました。その一方で、私は東京で育って大学も東工大。農業には全く触れずに入ってしまったので、業務の中身は解るようになっても、「農業」とうものがよく解りませんでした。
 でも、入省2年目に農村派遣研修という研修があり、この研修が私に「農業」というものを教えてくれたのかなと思います。私は山形県東根市の果樹農家さんのところで、1ヶ月間住みこみでお世話になりました。お世話になった家の方が本当にみんないい方で、見ず知らずの私を家族の一員として扱ってくださいました。一緒に起きて、一緒にごはんを作って食べて、一緒に農作業をして、一緒に寝て、まさに寝食を共にして、台風が来たときには一緒に心配して、収穫のときは一緒に喜んで、そんな一ヶ月間でした。
 農家の一人として暮らしたこの1か月で、少しですが、農業の現場にいる方々が気になることを、私も自然と感じることができるようになった気がします。例えば、台風が近付いてきたら心配になったり、農作物の価格が気になったり。
 この貴重な1か月を経て、私は初めて本当の意味で農水省の一員になれたかなと思っています。
 ちなみに、お世話になった農家さんのところにはそれ以降も何度も行っていて、そこでとれた果物達は全種類制覇しました(笑)。さくらんぼ、りんご、桃、ラ・フランス、どれもとっても美味しいです。お世話になった家の人や市役所の人とは、普段からメールしたり電話したり、東京にいらっしゃるときには会ったりもしています。これからもずっとつながっていきたいです。
 
Q官庁への就職は難しいと聞きますが、実際どうでしたか?
 教養試験は勉強しなければいけなかったので大変でしたが、専門試験は試験区分が分かれているので、自分に合った専門に近いところを受ければそこまでつらくないと思います。
 官庁へ就職するためには、人事院の国家公務員試験に合格した後に、希望する官庁を訪問する、官庁訪問をしなければいけないのですが、これは本当に大変でした。何度も面接を受けながら、自分が働きたい省庁はどこかを真剣に考えました。暑い時期の2週間なので大変でしたが、面接の間の業務説明が新鮮だったり、待合室で受験生同士仲良くなったり、農水省の官庁訪問は楽しかった記憶があります。
 
Q矢野さんの1日の流れを教えてください
 1年目は8時半に出勤し、その日の新聞から業務に関係がある記事を切り抜き、課内に共有したり、地方からの問合せに備えて電話番をしたりしていましたが、今は9時半に出勤しています。
 午前中、席に着いたら、まずはスケジュールを見て1日にやることを確認します。その後、メールをチェックします。返信が必要だったり、関係者への説明が必要だったりと、対応が必要なメールを処理します。メールの対応が済んだら、午前中の残りの時間を使って前日にやり残した簡単な仕事を処理することが多いです。
 午後、会議や外勤がないときは少しまとまった時間がとれるので、上司と打合せをしたり、情報収集をしたり、いろいろな作業を集中して行う時間にしています。
 国会開期中はこれに国会対応が加わります。自分達の業務に関係する内容が国会で取り上げられるときは、資料を作ったり、説明にまわったり、その準備で朝までかかることもあります。
 
Q官庁において女性が働く環境は整っていますか?
 産休・育休等の制度もしっかり整っていて、全体的に女性の活躍を応援しようという雰囲気があると感じます。
 私も今まで、子育て中のお母さんと一緒に仕事をしたことが何度もあります。確かにとても大変だとは思いますが、それでも仕事もプライベートもどっちも頑張るお母さん達はみんなとても素敵でした。周りの人もとても協力的で、みんなで仕事をできる限りサポートしていました。
 農林水産省内の女性率ですが、東工大よりは確実に高いですね。特に、私がいる消費・安全局は女性が多いと思います。
 
Q東工大に入学した当時は、どのような将来を思い描いていましたか?
 漠然と、企業で働く技術者になるんだろうなと思っていました。
 当時はよく考えていなかったのですが、とにかく高校のときに化学と生物が好きで、7類に入れば絶対に化学か生物ができるから、と思って東工大に入りました。
 
Q東工大で学んだ経験が役立っていると感じたことはありますか?
 専門の内容の勉強はもちろんですが、学部1、2年のときに理工系の基礎を一通り学んだことが特に役立っているなと感じます。理系の基礎をたたき込んでもらっているので、仕事で出てくる科学系の資料でよく知らない内容があっても、調べたり専門家に話を聴いたりすると理解できることが多いです。そんなときは、基礎をしっかり勉強した経験が役に立っているなと感じます。
 それから、工業大学ならではだと思うのですが、自分の研究を興味だけで終わらせず「何の役に立つのか」と、研究の出口をいつも考えていた経験がとても役に立っていると思います。扱う内容が工業から変わっても、自分のやっている仕事が「どこで、どんな風に、誰の役に立つのか」と、仕事の出口を自然と考えることができていると思います。
 あと、小さいことですが、研究していたときに身に付けたスケジュール管理する習慣も役に立っています。
 
Q東工大在学時はどのような研究をされていましたか?
 学部では、病原真菌の菌糸形成機構の研究をしていました。3年生で早期卒業をしたので、その研究室にいたのは2年半だけでしたが、アットホームに楽しく過ごしました。大学院では、病気とは違う研究もしたいなと思い、酵母を用いた外来タンパク質大量生産システムの開発をしていました。
 
Q東工大女子学生に向けて応援メッセージをお願いします
 東工大は、そのままの自分を認めてくれた場所だったと思います。そのような環境の中で、やりたいことはやって、言いたいことは言って、女性は少ないですが、男性に負けないくらいのパワーで元気に過ごしてほしいです。
 


2006年4月 東京工業大学生命理工学部第7類入学

2007年4月 生命科学科所属

2008年4月 分子生命コース所属

2008年10月 梶原研究室所属
  ‣病原真菌の形態形成機構の解析

2009年3月 東京工業大学生命理工学部卒業(早期卒業)

2009年4月 東京工業大学 大学院生命理工研究科分子生命科学専攻入学
‣酵母を用いた外来タンパク質大量生産システムの開発

2011年3月 東京工業大学 大学院生命理工研究科分子生命科学専攻卒業

2011年4月 農林水産省入省
消費・安全局 畜水産安全管理課 飼料安全基準班
‣畜産物の生産に使う生産資材、飼料添加物を担当。
‣飼料添加物の成分規格を定めた省令の改正、新規飼料添加物の検討、国際機関の査察受入対応等を行いました。

2012年4月 消費・安全局 消費者情報官 企画班
‣食育、リスクコミュニケーション、消費者相談の業務を行っている部署で総括業務を担当。
‣消費者情報官内外の人と相談しながら、消費者情報官の業務について、消費者情報官としての回答をまとめていく仕事をしました。

2013年4月 消費安全局 消費者情報官 食育推進班
‣消費者情報官内で課内異動し、食育を担当。
‣食育推進のあり方を検討する会議、食生活や食料消費の実態を把握するための調査、食文化の保護継承のための先進事例調査等を行いました。

2014年4月 消費・安全局 農産安全管理課 農薬対策室 企画調査係長
‣農産物の生産に使う生産資材、農薬を担当。
‣農薬の登録制度に関する仕事をしています。







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