兵庫県
講演会
2024年度アフタヌーンセミナー報告 | 2024/11/18 |
11月9日、絶好の秋晴れの元、神戸・元町の神戸市教育会館において令和6年度兵庫県支部アフタヌーンセミナーが開催され、会場32名、オンライン24名と多数の参加をいただきました。 まず、東京大学定量生命科学研究所教授の小林武夫先生より「生物はなぜ死ぬのか」と題してお話いただきました。参加者の大半が「老化」や「死」を現実のものとして受け止めなければいけない年代となっていますが、生物の進化にとって、老化や死は大変意味があることが理解でき、参加者一同、少しは気が楽になった様子でした。また良いシニアが増えることが、社会の活性化につながるということで、シニア世代の社会参加が重要かつ意義深いことがよく分かりました。 2つ目の講演は名古屋工業大学大学院工学研究科教授の徳田恵一先生より「音声合成技術の発展と未来~個人的視点から雑談風に~」と題してお話いただきました。最近は音声合成技術が色々な場面で社会実装されており、特にカラオケやゲームの分野では実際の人の声とほとんど差がない合成された音声が、場の盛り上げに一役買っていることが理解できました。理論のお話は若干難解でしたが、多くの実演を交えていただきましたので、大変興味を持つことができた内容でした。 セミナー終了後は交流懇親会の場に移り、講演の中ではお聞きできなかった内容や質疑応答に一層盛り上がり、成功裏にセミナーを終了することができました。 (南方克也 S63物理情報工学)
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2023年度アフタヌーンセミナー報告 | 2024/01/05 |
2023年11月18日(土)、神戸市ラッセホールを会場にオンラインを併用して開催しました。参加者は、支部会員に加えて、関西五支部や如水会からも参加頂き、会場参加27名、オンライン参加17名で合計44名でした。 1つ目の講演は、東京工業大学データサイエンス(DS)・AI全学教育機構長・教授三宅美博氏より 「東京工業大学におけるデータサイエンス・AI教育がめざすもの」がテーマです。 2019年に策定された国家AI戦略に基づき、学部一年生から大学院まで全学教育を行い、 約200人/年の認定取得者の創出を目標に日々活動してきた東工大におけるDS・AI全学教育研究機構(以下、機構)の 取り組み内容と研究事例について、ご講演頂きました。 AIの出現は、産業構造に大きく影響を及ぼすことを背景にして、機構では、テクノロジー教育にとどまらず、 社会規範、倫理に関わることまで取り扱っている。 近年、共創型エキスパートが求められ、機構では、 企業と大学が社会連携した共同教育を進めている。企業人による授業によりDS、AIの現場での活用事例を共有し、 今後ともDSおよびAIは基本ツールとなっていくことから、機構では先端的なデータサイエンス教育を目指している。 先端的な研究事例として、アルツハイマーやNPHなどの発病分析の研究において、人間の歩き方をAI活用し、 セラピストの役割を担い、アルツハイマーなどの病状改善に効果を発揮している成果の紹介も頂きました。 2つ目の講演は、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授山本貴光氏より「いま、改めて哲学してみるために」がテーマです。 「哲学とは」どういうものなのかを、歴史を紐解きながら紹介頂いた。歴史的に哲学者と呼ばれる人々は、 言語系の文法、論理、レトリカ等、数学系の幾何学、算術、天文学、音楽等、多様な分野に精通していた。 デカルトは、学問のマップを作り上げ、哲学の「根」があり、「幹」ができ、「枝葉や果実」になるように分けて考え、 数学や自然学が分かれていった。これまで、哲学以外は研究対象が学問名になって発展してきており、残された形而上学的なものが哲学となっている。 現在、専門分野が高度化してきたが、社会問題は一つの分野だけでは課題発見・解決できないことが多くなってきている。 共同ワークが必要で他分野の人とコミュニケーションをとり、共通認識・基盤等をどう作り上げるのか、インターフェースどうするかが必要となる。 知識体系の起源となった哲学、リベラルアーツは共通基盤となる知識・認識であり、思考に自由を与える重要なものとなるのである。 今回の講演は、科学技術を駆使して課題に立ち向かう現在の基盤「DSとAI」がテーマであり、 一方は社会科学である人間の心理・思考在り方の基盤「哲学」がテーマでした。 講演会後の交流懇親会では、会員間の交流とともに、両先生との意見交換で講演内容をさらに深めるなど予定時間を超え、大変に盛り上がりました。対面開催の良さを改めて実感しました。 (尾崎勝彦 S63修エネルギー科学)
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2022年度アフタヌーンセミナー報告 | 2022/12/21 |
2022年10月29日(土曜日)、神戸市ラッセホールにて会場とZoomオンラインで開催しました。参加者は会場22名、オンライン19名でした。支部会員の他、他支部や如水会からも参加頂きました。講演は2つです。 1つ目は東京工業大学リベラルアーツ教育研究院 教授 柳瀬博一先生から「『国道16号線』から考えるレイヤー思考とリベラルアーツ」と題して講演を頂きました。 「国道16号線」は神奈川県三浦半島横須賀市から、横浜市、八王子市、川越市、春日部市、柏市、八千代市、千葉市、木更津市に至る関東外環国道である。現在の国道16号線は、郊外モールが元気な自動車の街、大学の多い道、都心のベットタウンのある街、京浜工業地帯・京葉工業地域など、多くの方は東京発展の外環とイメージしてしまう。しかし、関東平野の遠い過去に遡ってみると、その地域は関東平野の形成に由来する縄文時代の貝塚がもっとも集積し人が集まる「地形」になったこと始まり、古墳の多い道、国府がおかれた道であり、武士政権の成立では源頼朝が鎌倉幕府の重要ルート(鎌倉街道)、江戸幕府を囲む譜代大名の城が守る地域、明治の殖産興業、富国強兵に重要な役割を果たした道である。 講演では、このような視点で縄文弥生時代から、近代や現代まで時代毎のレイヤーで分析・紹介頂いてみると、発展事実解釈も全く異なるものとなること、大きな刺激となるものでした。 2つ目は東京工業大学地球生命研究所長 教授 関根康人先生から「宇宙から生命の起源を探る」と題して講演を頂きました。 「この宇宙に生命は存在するのだろうか」の問に、液体の水、有機物、エネルギーが生命の生存に必要な三大要素と言われていますが、10年前まで科学者が真剣に考える課題ではなかった。しかし、地球深海生命の知見、火星、木星の周りを回る氷の衛星にも氷地殻の下に広大な液体の海を持つ天体の発見、地熱エネルギーの存在を示す鉱物や有機物が海水に含まれていることの発見があり、次々と明らかになってきた知見を紹介頂いた。さらにハヤブサ2がリュウグウから持ち帰った岩石など小惑星の探査に関する最新の知見も紹介頂き、“生命を育む星”に対する概念が変化しつつあり、生命の起源探索に一歩、二歩と前進していることなど、新たに理解がすすみ、興味が尽きぬ思いとなった講演でした。 講演会後、3年ぶりに感染予防、着席形式で両先生にも参加頂き、交流懇親会を開催しました。講演内容の続きの意見交換、久しぶりに顔合わせての交流で話題は尽きず、盛り上がり、楽しい時間となりました。 なお、2つの講演内容は蔵前ジャーナルにも掲載されますので、ご一読下さい。今後もアフタヌーンセミナーでは、技術系と非技術系の注目される話題を取り上げ、講演会を企画します。秋季に開催する次年度のアフタヌーンセミナー講演を楽しみにして下さい。 (S48卒、S50修 機物 大友朗紀)
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2020年度アフタヌーンセミナー報告 |
2020/12/11 |
2020年11月28日、Zoom利用によるオンラインでのアフタヌーンセミナーを開催しました。 兵庫県支部としては初めての試みでしたが、遠方の会員を含めて56名が参加し無事終了しました。 最初の「量子アニーリングを中心とした量子コンピュータ研究開発の現状と展望」は東工大西森秀稔特任教授から、 先生の研究室が理論提案した量子アニーリングは量子コンピュータの最先端を行く研究で、 与えられた条件を満たす最適組み合わせを見出す独創的な手法として世界中の多くの大学や企業が研究開発を進めていると紹介されました。 さらに、今後の発展の方向性や課題について解説されました。 続いて、「withコロナの大原美術館」は(公財)大原美術館大原あかね理事長から、 大原美術館の創設者大原孫三郎を中心とする大原家の歴史と、孫三郎と美術館の資料収集に尽力した 洋画家・児島虎次郎との出会い、また、藤田嗣治の《舞踏会の前》を、科学の力を借りた修復手法により 本来の乳白色に再生して作品本来の魅力を取りもどすことが出来たという紹介がありました。withコロナの時代に、 今までとは違う関わりをお客様とどのように作っていくのか、今後の大原美術館のチャレンジについて伺いました。 講演終了後、集合写真ならぬ集合画面をスクリーンショットにより記録し、続いて20名余りが参加したオンライン交流会では 佐藤勲総括理事・副学長から東工大の近況についての報告がありました。 兵東勇(S44電気)
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2019年度アフタヌーンセミナー報告 | 2019/11/23 |
11月23日、神戸市中央区のラッセホールにて講演会を開催し、引続き懇親会を行った。講演会は如水会、一般の方を含めて55名の方に聴講頂いた。 最初の講演は、「新国立競技場の建設と東京の再開発」のテーマでOBの大成建設株式会社顧問の河野晴彦様(S50建築)から完成目前の新国立競技場の建設に付いて、世界の著名な建設物のご紹介、当初計画が予算を遙かに超過し再コンペと成った経緯、再コンペで採択されてからの短納期・予算厳守・木を取り入れた神宮の森との調和・巨大建造物建設等々の課題を建築の設計・工事等に関する新しい技術で克服された事、更には東京のホテルオークラや高輪プリンスホテル等のリニューアルによって変わる東京をご講演頂きました。 次の講演は、「宇宙への道、輸送系と惑星探査」のテーマでJAXA角田宇宙センター所長の吉田誠様から「分かり易い事例と親しみやすいイラストによる宇宙の基礎」、「ロケット噴射の轟音、液体水素の燃焼スピードの凄まじさ等角田宇宙センターの開発技術の紹介」「日本のペンシルロケット・米ソ競争時代・国際宇宙ステーションまでの歴史、はやぶさ、はやぶさ2の成果、沢山の美しい惑星の写真の紹介」「これからのテーマとして開発中のH3ロケット、宇宙旅行の健康問題等」をご講演頂きました。 その後の懇親会ではボージョレヌーボーも味わいながら、お二人の講師を取り囲んで新国立競技場の建設或はロケット開発や惑星探査に関する質問に分かり易くご説明頂き楽しい歓談の場を持つことが出来ました。 宮後彰(S48電気)
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2018年度アフタヌーンセミナー報告 | 2018/11/17 |
11月17日(土)神戸市ラッセホールにおいて、平成30年度アフタヌーンセミナーを開催しました。支部の若手からベテランに加え、他支部からも参加頂き、参加者は総勢54名となりました。 今回は、急速な進歩を遂げているIT技術が、金融、スポーツという全く異なる2つの分野に対してどのような変化を与えているかをテーマに、その最前線で活躍される2人の東工大OB・OGに講演いただきました。 金融については、「Fintechが拓く未来」と題して、(株)Sound-Fintech 代表取締役の土屋清美様(S57応物)より、仮想通貨とそれを支えるブロックチェーン技術、Fintechが社会や経済に与える変化、電子商取引の未来、セキュリティ問題などについて講演いただきました。 続いてスポーツについては、「スポーツを科学の力で紐解く」と題して、スポーツアナリストの河合正治様(S42応物)より、主に競泳や野球を対象に実際に指導したオリンピック選手とのエピソードを交えながら、科学の力がスポーツの進化にどのように貢献してきたのかについて講演いただきました。どちらも大変興味深い内容だったため、講演後は活発な質疑応答が行われました。 講演者2人も参加した懇親会では、講演中では質問できなかった参加者が次から次へと質問を投げかける様子や、年代の異なる各層の参加者が楽しそうに会話をする姿が見られ、とても活気ある交流となりました。最後は、恒例の校歌斉唱を行い、中締めとなりました。 坂入 威郎(H16修社工)
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![]() 平成30年度アフタヌーンセミナー河合正治講師資料抜粋 資料1 資料2 |
2017年度アフタヌーンセミナ報告 | 2017/11/11 |
平成29年11月11日(土)午後にラッセホールにて二つの講演を開催しました。弊支部会員に加えて、本部事務局長や大阪、京滋、和歌山県の支部長、近隣支部会員、如水会や一般参加者を含む約60名の参加となりました。 一つ目は、科学技術創成研究院 岡崎 健 特命教授から「多様性を基軸としたこれからのエネルギー戦略」の講演です。日本のエネルギー安全保障と温暖化対策の切り札となるCO2フリー水素、未来の水素社会の実現に向けた未利用エネルギー活用、水素発電などの技術開発、ロードマップ、さらに東工大グローバル水素エネルギー研究ユニットの活動について、篤く語って頂きました。真にCO2排出ゼロを目指す日本社会には、再生可能エネルギーとCO2フリー水素の活用が重要であることを理解、強く認識できた講演でした。 二つ目は、㈱国際経済研究所 井戸清人 副理事長から「世界経済の動向と日本の構造問題」の講演です。米国、中国、欧州等の重要なイベントや経済指標データの紹介、各国の課題や動きが日本に与える影響に触れて頂きました。現在の日本ではアベノミクス3つ目の矢「成長政策」の効果で良好な実感が待たれること、人口減少が続く中で長期的経済成長には、女性労働参加や外国人材等労働市場改善、国際経験豊かな経営幹部育成等が課題と示されました。私たちが報道で接する断片的な事柄が整理され、関連性の理解が進みました。 セミナー終了後、両先生にもご出席を頂き、懇親会を開催しました。本部、各支部等からのトピックス 紹介をはじめ、セミナーでは質問時間が限られたこともあり多岐にわたる意見交換とともに懇親の時間 となりました。 大友朗紀(S48年機物、S50年修機物)
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2016年度アフタヌーンセミナー報告 | 2016/11/19 |
神戸元町のラッセホールにおいて2016年11月19日(土)午後、2つの演題について講演会を開催致しました。兵庫県支部及び近畿各支部の当会員に加えて如水会の方々さらに一般の方も加えて総勢50人程度にご参加頂きました。 1つ目の演題は「「がん」から見える細胞の営み」で、支部幹事でもある神戸大学大学院医学研究科の枝松裕紀講師に、日本人の2人に1人がかかると言われている「がん」をテーマに、細胞生物学やがん遺伝子研究の最前線の話をして頂きました。実験発がんの開拓者の一人で映画が最近公開された山極勝三郎氏のエピソードや神戸大学での発がん研究に基づく治療薬探索への取り組みも紹介されました。 2つ目の演題は「東工大立志プロジェクトと学び合う場づくり」で、リベラルアーツ研究教育院の中野民夫教授に、東工大改革の柱であるリベラルアーツ教育改革について、“学生同士で対話を進めながら主体的に参加する授業づくり”の取り組みを冒頭で説明して頂きました。後半ではセミナー参加者も母校の学生と同じように、4、5人ずつのグループに分かれ、段ボールの円卓(「えんたくん」と言います)を囲んで母校の未来像についての創造的な対話を体験しました。 講演終了後は両先生を囲んで懇親会を開き、各支部、如水会また若手の方などからご挨拶をいただき、盛会のうちに今年度のアフタヌーンセミナーを終えました。 (北原記)
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2015年度アフタヌーンセミナー報告 | 2015/11/21 |
2015年11月21日(土)午後, 神戸ラッセホールにて, 我々が最近気になる“火山活動の活発化しているがどうしたのか?”と“橋梁・高速道路などの社会インフラが老朽化し始めているがどうしたら良いのか?”の2件につき講演会を実施しました。 当日は兵庫県支部の他に近畿他支部からの参加のほか如水会からも多数のご参加をいただき総計70名を超す盛会となりました。 セミナーの1件目は, “日本の火山活動の現状について~富士山の噴火について~”と題し, 東工大大学院地球惑星科学専攻の高橋栄一先生から, 地震と火山活動の関係について地震による応力場の変化により火山噴火が誘発される可能性を宝永地震(引き続く富士山宝永噴火), 17世紀初頭の北海道東部地震(引き続く北海道の火山活動)などの例から, さらに何時頃から火山活動が再開するかを予測するために必須の火山の深部構造とそのダイナミックスについて, 8600気圧内燃式ガス圧装置を用いた高橋先生の研究成果による富士山のマグマだまりの研究を例にご説明いただいた。 地震と噴火の関係は当たり前のようなつもりでいたが, その一つのメカニズムの説明を伺い理解を進めることができた。 セミナーの2件目は, “社会インフラの老朽化”と題し, 東京都市大学学長・東工大名誉教授の三木千壽先生から橋梁などの社会インフラの老朽化の現状と維持管理のあり方について, 構造物設計には経年限界の概念を取入れてこなかったことから, 早急に劣化の原因究明・その除去・適切な措置を講ずるシステムの確立が必要でありかつ経済的に成立しうる唯一方案であることを, アメリカや国内における先生ご自身の現場経験・研究に基づきご説明いただいた。先生の言われるこのような予防保全を医療分野での成人病に例えてのご説明でなるほどと納得行くものであった。 セミナー終了後は両先生のご出席のもと懇親会を開き, 如水会・蔵前工業会近畿各支部の皆様からセミナーの感想などご挨拶いただきました。 (真鍋記)
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2014年度アフタヌーンセミナー報告 | 2014/11/29 |
11月29日(土)神戸ラッセホールにて開催しました。蔵前工業会会員のみならず、一般参加者にも公開し、支部会員のほか大阪支部、和歌山支部、京滋支部、さらには一般参加者を含め、約60名の参加となりました。現役退職者、平成卒会員14名、中学生のお子様の同伴あり、幅広い年齢層の参加を得ました。講演の要旨は下記の通りです。 最初は、兵庫県立大学産学連携・研究推進機構教授の長野寛之様から、テーマ「日本のものづくりを考える~家電と自動車に学ぶ~」で講演を頂きました。グローバル経済が進展する中で、家電業界では新製品の事業化に成功するも、その市場が急拡大する時期になると、韓国や中国の後発企業にその市場の主役を奪われ、事業撤退を余儀なくされた。この要因について、プロダクションイノベーションへの対応が重要であることを紹介された。一方、自動車業界を例に、製品ライフサイクルのロングテールでのイノベーション継続などの重要性を指摘された。最後に、日本の強さに基づく戦略には、人間尊重の経営の重要性を強調された。企業での実体験に基づいた分析と考察は、大変参考となるものでした。 二つ目は、本学リベラルアーツセンター教授の上田紀行様から、テーマ「『生きる意味』の不況を超えて~真に活力ある日本社会創造のために~」で講演を頂きました。東京工業大学が、専門家に留まらず真のリーダーとなる人材育成に向けた大改革の紹介にはじまり、自信のフィールド活動などを通じた自己紹介を頂きました。ダライ・ラマ14世との対談なども大変に興味を引くものでした。グローバル経済の下で企業の存続や日本の成長は不確実なものとなり、雇用も不確実となった今日、経済に強く依存した人生感を見直し、一人ひとりが「生きる意味」を構築し、真に活力ある社会を構築する岐路にあることを指摘し、大きな共感を得ました。 講演後、講師の方々にも参加を頂き、約40名での懇親会を開催しました。関西各支部の紹介、「燕友会」や「くらりか関西」の活動紹介にはじまり、料理とアルコールも加わり、講師を囲んでの意見交換、会員間での自己紹介や情報交換など大きな盛り上がりとなりました。中締め後、上田先生には帰宅の新幹線まで限られた時間ではありましたが、若手参加者を中心に先生と意見交換を続け、皆、元気をもらい、笑顔の帰路となりました。 |
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大友朗紀(S48卒、S50修機物) |
2013年度アフタヌーンセミナ報告 | 2013/12/7 |
「原子力発電所の事故・トラブル事例 -分析と教訓-」 二見 常夫 氏 東京工業大学特任教授/ビジネス・ブレークスルー大学大学院教授 元福島原子力発電所所長のご経験を持って検討の結果として, 今回の福島の事故のもっとも重要な教訓として, 炉を溶かさずに停止させるための根幹要素としての, 電源・水源・ヒートシンク(排熱先)の各々の多様化が不足していたこと, これは従来プラント安全には注力してきたが発電所安全という観点が不足していたことを意味する, とのお話でした。 また極限状況では最後は人の力であること, そして事象進展は科学的で想定外も希望的観測も存在しない, との結論でした。 お話を伺い特に第2項は日本人に一番苦手なことで, 不都合な情報はそもそも存在しないこととして物事を進めがちな我々の性癖は大いに反省すべきことを痛感しました。 |
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「成熟社会の経済政策のあり方」 小野 善康 氏 大阪大学 社会経済研究所教授 1990年代初頭のバブル崩壊を境に高度成長から一転して長期不況に陥っている理由は, 高度成長期とは物が不足して需要がある状態であり, 一方現在の我々の社会は十分な生産力があるにもかかわらず, 需要の無い成熟社会であるとし, その説明として金融緩和によるマネタリーベースが1990年ころからすでに2‐3倍に達しようとしているにも関わらず, 消費者物価指数・名目GDPともに全く増加していないことがしめされた。 この成熟社会で求められるのは, 最終需要を創出できない従来からの企業・就業支援では無く, 生活の質の向上(芸術・教育・再生可能エネルギー)に結びつく需要の創出であるとのことでした。思い浮かべてみれば我々の親の世代は, 贅沢もせずひたすら働きずめでしたし, 我々もそのような生き方が当然として育ってきたのですが, そろそろ考え直さないといけない時代になったということで, 社会の発展という視点から考えてみればむしろ幸せな時代に到達しつつあるということではないでしょうか。 (真鍋 記)
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上左 二見氏, 上右 小野氏,
下 懇親会(井口支部長ほか)
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2012年度アフタヌーンセミナ報告 | 2012/12/1 |
「ロボットの活用と今後の展望」 中土 宜明 氏 公益財団法人 新産業創造研究機構 神戸ロボット研究所所長 産業用ロボット, 四肢の動きを助けるリハビリ支援ロボット, 牛に生体センサを取付けて獣医師によるオンライン健康管理を行う支援システム, 掃除ロボット・癒しロボット等のサービスロボット, 斜面の草刈りをする農業ロボット等のご紹介を頂きました。 又 “色々なアイディアで多様な開発が行われているにも拘わらず, 費用対効果が悪くなかなか実用化されない” との悩みもお伺いしました。 |
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「地震の揺れの科学」
山中 浩明 氏 東京工業大学 総合理工学研究科 環境理工学創造専攻 教授 柔らかい地盤での表面波により, 震源から700㎞も離れた大阪府咲洲庁舎では固有振動数が合致したことも合わせ長時間の揺れが続いた。 兵庫県南部地震以降の研究の進展により複雑な地震記録の特徴を理解出来るようになり, 予知(日時・場所・大きさ)は出来ないが想定地震による揺れの大まかな予測も出来るように なった。 |
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左から中土所長, 山中教授, (挨拶)宮脇支部長
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2011年度アフタヌーンセミナ報告 | 2011/10/29 |
「お江戸の富の再分配」
山室 恭子 氏 東京工業大学社会理工学研究科社会工学専攻 教授
借金棒引き令とは、江戸時代の幕府が商人からの借金が累積し、返済困難になった武士を救済する為、1784年(天明4年)以前の借金は債務免除とし、それ以降のものは低金利返済する法令である。 幕府(公儀)は、商人に対して武士へ借金を棒引きするととともに、商人から御用金を集めて、ブールし、武士へ融資することで、富の再分配を行った。商人から不満がでなかったのは、幕府の保護の下で、相当の利潤を得ていた弱みがあったからで、一方、武士は借金による負債のリスクは大きいが、国家を支えている自負があったからである。借金棒引き令は、商人の利潤を抑えるための最良の方法であったと言える。
江戸時代の50年に一度の武家の借金棒引きについて、幕府、武家、商人の関係をストーリ仕立てに、易しく説明頂き、ギリシャ金融危機に通じるものがありました。
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「自然に学んだ500系新幹線とこらからの新幹線、海外展開の展望」
仲津 英治 氏 社団法人 海外鉄道技術協力協会 参与 (元JR西日本)
新幹線は、昭和39年開業以来、旅客の死亡事故ゼロという記録を更新し続けており、現在82万人/日が利用している。 JR西日本では、時速350キロの高速化の実現を目指し、平成元年に検討を開始した。最大の課題は、世界で最も厳しいと言われる環境基準の騒音を克服することであった。高速走行時の主な騒音源には、集電系音と車体空力音がある。集電系音とは、パンタグラフの後方にカルマン渦によって発生する騒音で、パンタカバーの改良や翼型パンタグラフ採用により騒音の低減を図った。翼型パンタグラフは、フクロウの静穏飛翔(飛翔音を出さない)をヒントにしたもので、小さな渦が大きな渦を防ぐことで、騒音を低減することが出来た。 また、車体空力音として、特にトンネルの多い山陽新幹線で、トンネル微気圧波の発生が課題であった。新幹線がトンネルに突入した際、圧力波が発生し、トンネル出口で騒音が発生するものである。これを解決するヒントが、カワセミの嘴である。500系新幹線では、先頭形状は300系が6mであるのに対して、15mと大幅に長くなっている。 フクロウの静穏飛翔の原理を活かした翼型パンタグラフや、カワセミの嘴に近似させた先頭車等、自然には学ぶべきことが多いことや、海外での高速鉄道の動向等、大変興味深い話を説明頂きました。
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