第14回セミナー報告(平成31年2月2日)
「放送局の技術者って何するの?」
講師:中島博和氏(1972[S47]年電気卒)
中島氏顔写真
講師の 中島 博和 氏(2018年の総会の時に撮影)
【セミナーの概要】
日時:2019年2月2日(土) 15:00~16:30
場所:東工大蔵前工業会館(大岡山駅前) 2階 小会議室1
講師:中島 博和 氏(1972年電気卒)
懇親会、於「あたり屋」(17:00~19:00 )
1972年電気卒の中島博和氏にお願いして、TBS(株式会社東京放送、1955年からテレビ放送開始)に勤務した経験をもとに、『放送局で必要とされる技術にはどんな物があり、技術者はどんな仕事をしているのか? あまり皆さんに知られていないことをお話したいと思います。』とのことで、テレビ放送関係の音声技術を中心にお話ししていただきました。
TBSビル(旧)
港区赤坂5丁目にあったTBS旧局舎(TBS本館ビル(後の赤坂メディアビル)とTBS会館の後ろ側にテレビ局舎は位置していた、出所「TBS50年史」)
【セミナー参加者】(10名)
難波征太郎(1964、化工)、三橋慶喜(1964、制御)、福島正之(1967、建築)、横山功一(1969、土木)、佐藤修三(1971、電子)、大野隆三(1972、建築)、中島博和、前田恭男(1972、土木)、前田豊(1972、制御)、小関伸夫(1974、建築)
【講演内容】
司会は、佐藤修三さん(1971年電子卒)にお願いした。
お話の途中での質問を交え皆さんの理解度を確認しながら、興味深いお話が分かりやすく紹介された。
講演の構成は以下のようになっている。ここでは勤務歴を辿って、入社してから経験した仕事の内容・技術課題・エピソードを取り上げる。それ以外の話題に関しては、別添の配布資料を参照してください。 【配布資料(後半部分)】
【講演の構成】
● はじめに(勤務歴)
●放送局で技術者がかかわる仕事
● 放送技術者に求められる知識
● 放送局で扱う周波数・電力
● 技術者もアーティストでジャーナリスト
● こんなこともありました
【勤務経歴と取り組んだ仕事 】
● 1972年4月 東京放送入社、制作技術部(音声担当)
- 朝ワイド、ドラマ、バラエティ、歌番組などのフロア、ミキサを担当
【主な担当番組】奥さま八時半です、ゆく年くる年、うちの子に限ってパート2、うさぎ飛ぶ海(フロア)、クイズ100人に聞きました、世界ふしぎ発見、サウンド・イン" S "、 ザ・ベストテン、日本レコード大賞(サブ受け) など
- スタジオ音声設備の保守・更新・新設
- 電波管理局提出用測定データの自動作成
● 1986年7月 研究開発部
- CGシステムの開発・導入
- テニスサービスボールのスピード測定システムの開発
- EDTVの開発(コンピュータシミュレーション)
- スタジオ用音声卓の開発
テニスのサービススピード測定
テニスボールのサーブ速度測定のオンエア画面(出所「TBS50年史」)
スポーツ番組ではゲームスコアや選手名など、臨機応変にさまざまな情報を画面にスーパーインポーズする必要がある。 86年10月に開催されたSEIKOスーパーテニスの放送に、研究開発部が開発した「テニスボール速度測定システム」を使用し、 日本ではじめて球速をリアルタイムで画面に表示することに成功した。
デジタル音声卓見学
他局の最新デジタル音声卓を仲間と見学に行った時のスナップ(一番奥が中島さん、1997年技術部時代)
● 1990年 技術部
- スタジオ音声設備(赤坂・緑山)の予算管理・保守・更新・新設
- 緑山スタジオの音声設備更新・新設【M1、M2、MA1、音響1 (アナログ)、MA2、音響2 (デジタル)】
- 放送センターの音声デジタル伝送・同期システムの構築・開発
- CSデジタル音声放送の同期システムの構築・開発
● 2000年8月 ラジオ局技術部(のちにTBSR&C 技術部)
- ラジオ放送設備の予算管理・保守・更新・新設
- インターネット音声放送設備の新設(OTTAVA)
- ラジオ放送の運行管理者
● 2007年8月 TBSテレビ 技術開発部
- 現行および新放送システム(音声)の調査・研究・開発
- ARIBスタジオ音声作業班委員 
ITU-Rの勧告作成に寄与(放送番組のラウドネス基準の勧告など)
- JEITA/EIAJプロ対応デジタルオーディオ標準化G 主査
IECの標準化作業に寄与(プロ用音声ファイルフォーマットの標準化など)
TBS新局舎
建て替えられたTBS新局舎(撮影:中島博和氏)
【質疑応答】
Q1:テニスのボールの速さを画像処理で計測する方法はとても興味深かったのですが、どの位置で測っているのでしょうか?
A1: 当時のTBSで開発した方法では、ラケットで打った時の音をトリガーとして計測していたので、打球直後の速さを測っていたことになる。
Q2: ワイアレスマイクはピンマイクから発信機までのびているコードが首元から服の中に入っていって見苦しい。 ピンマイクから直接発信できるようになりませんか?
A2: 発信機はかなり小さくなったものの、まだピンマイクだけで飛ばせるようなものは無い。
Q3.(TV放送各局間での音声レベル(コマーシャル音量含む)の規制がITUを通じて世界的に標準化された ことに関連して)、日本が先駆けて行われたのか、各企業がVTRなどの製品化に反映したか?
A3.日本が先、ということではなく、日本、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなどが ITU-R で議論した 結果の勧告に基づいて各国でルールを作り、運用している。
C.<感想>YOUTUBEの動画では音量レベルが異なり、大音量になったり小さすぎたりがあり、その都度自分で音量 を上下しないといけない。
C.<中島さんの補足コメント>ITU-Rの勧告は放送番組(CM含む)に対するもので、ネット配信やDVD、ブルーレイ などのパッケージ物、ゲームなどには適用されません。従って、YOUTUBEも適用外なので音量のばらつきがあります。 VTRのCM抜き機能はラウドネスとは無関係です。番組の音量は時間平均されたものが規制されているので、コマーシャルでは冒頭の音量を高くするなどして、 印象に残るように作られているものもあるようです。
<参考>以下に民放連のラウドネスに関するサイトと、ラウドネスの測定方法を解説した文章が載っている。
取りまとめ:横山功一@セミナー担当幹事
第14回セミナー(2019/2/2)
講師:中島 博和 氏(1972年電気卒)
放送局の技術者って何するの?
第14回セミナー報告(本ページ)
【講師(中島博和氏)の略歴】
1972年3月 工学部電気工学科卒業
1972年4月 株式会社東京放送入社
制作技術部で番組制作の音声として、ドラマ、バラエティー、朝ワイド、歌番組などのスタッフ、ミキサーを担当
研究開発部でテニスボールのスピード測定システムを開発
技術部でスタジオ音声設備の新設・更新・保守・予算管理
新館建設で音声伝送の全館デジタル化
民放連、ARIB、JEITA、AESでデジタル音声の標準化・規格化作業に参加、など
本セミナー担当
全体企画・ホームページ作成:横山功一幹事