学術講演会のご案内

2022年11月5日(土)の第7回れんさ会同窓会にて、下記の通り学術講演会を開催します。
開催方法は東工大の会場とZOOM会議(オンライン)でのハイブリッド形式で行います。
東工大の新型コロナウイルス感染症対策に準じ、東工大の会場には限られた人数しか参加できませんので、会員の皆様にはオンラインでのご参加をお願い致します。

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13:30~14:30
土肥義治氏

(B69, M71、東京工業大学名誉教授・理化学研究所名誉研究員)
講演題目 「バイオプラスチック研究のこれまでそしてこれから」
講演要旨  20世紀に進展した高分子の科学と産業は、石油などの化石資源から高分子物質を化学合成し高性能材料化する方法論と技術を確立し大きく発展した。現在、世界で一年間に約4億トンのプラスチックが生産され多方面に使用されている。しかしながら、地球環境問題や化石資源の有限性を考えると、高分子産業においても原料、生産技術、機能の多様化が必須であろう。
 演者は、21世紀には再生可能な植物バイオマスから生分解性高分子をバイオ合成するシステムを発展させる必要があると考え、1984年から生分解性高分子の生合成、高生産微生物の分子育種、効率的バイオ生産、高機能材料化、生分解性制御、環境影響評価という一連の研究を進めてきた。とくに、分子生物学と高分子科学を融合し、バイオプラスチックの生合成と分解に関する科学と技術に関する新たな領域を開拓してきた。
 生分解性プラスチックの研究開発は、ごみ問題や環境問題の解決を目指して1990年頃から世界各国にて始まった。また、地球温暖化対策の一つとして、バイオマスからプラスチックをつくる研究が2000年頃から国際的に活発化した。「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」を総称して「バイオプラスチック」と呼ぶことが多い。本講演では、地球環境との調和を目指すバイオプラスチック研究開発の現状と課題を紹介したい。
14:30~15:30
沼田圭司氏

(B03, M05, D07、京都大学 大学院工学研究科 材料化学専攻教授)
講演題目 「クモ糸ビッグデータと光合成生物により完全循環型高分子材料を目指す」
講演要旨  高い靭性(タフネス)を示すクモの牽引糸は、既存の構造材料では達成できない力学物性を示すと同時に、自然環境中で完全に分解される環境分解性を有し、様々な材料分野や産業から注目されている。しかしながら、材料となるシルクタンパク質を、従来型の発酵法で生産するためには多大な炭素源と窒素源が必要であり、環境循環型・環境低負荷とは言い難い。
 そこで、我々はシルクタンパク質をはじめとした構造タンパク質を、植物細胞をはじめとした、光合成生物を利用して合成する基盤技術を研究してきた。特に、海洋性紅色光合成細菌を利用した生産は、海洋国家日本における新たな材料合成法を示すとともに、二酸化炭素や窒素を原料として構造タンパク質素材やバイオ高分子材料を合成する、革新的な生合成基盤と言える。最近では、1000種類以上のクモ糸の化学構造と構造物性をデータベース化することで、クモの牽引糸が示す超収縮と呼ばれる水に対する高い感受性と、高い相関を示すアミノ酸配列を明らかにし、耐水性に優れた人工クモ糸の開発を可能にした。
 以上のように、クモ糸ビッグデータを利用した高分子材料設計と光合成生物を利用した生産技術の方向性を示すことで、二酸化炭素からの生合成と二酸化炭素への精密分解が可能な環境循環型高分子材料を創出する科学について講演する。